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Maraku Interview 宇宙飛行士・日本科学未来館名誉館長 毛利 衛さん

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Maraku Interview 宇宙飛行士・日本科学未来館名誉館長 毛利 衛さん

日本人初の宇宙飛行士として、2回にわたりスペースシャトルで宇宙に飛び立った毛利衛さん。
75歳の今も精力的に活動を続けている毛利さんに、70歳からのライフスタイルや楽しみ、輝く日々の過ごし方の秘訣についてお話を伺いました。

これからの人生を、より豊かに羽ばたくために

 生き物は、生まれ、成長し、種に貢献し、次世代につなげ、時が来たら去っていく。これが数億年前から続く生命の営みです。
 人間も例外ではありません。社会のため、誰かのために役に立ち、後につないでいく役割を果たしていきます。私個人のことをいえば、体力が充実している時に宇宙飛行士として二度のミッションに取り組み、その後は日本科学未来館で初代館長として先端科学技術の可能性を広く社会に伝えるとともに人材育成に力を注いできました。70歳を超えてからは、地域への貢献を念頭に、宇宙から地球を見るようなマクロな視点と、科学者が遺伝子の世界を探るようなミクロな視点で、世の中で起きていることを地域の皆さんと一緒に考えていく活動に取り組んでいます。人口が増え、資源や食料に限界を迎えつつある地球で、過疎化する地域に暮らすとはどういうことなのか。豊かさとは何か。インターネットや人工知能をどのように利用すればよいか。そうした問いを考えることが、地域や日本の将来をより良い方向へ変えるきっかけになっていくと考えています。

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 自分のそれまでの生き方をもとに、自分ができる範囲とやり方で社会にお返ししていくこと。そして、周囲に支えられていることを常に忘れずに、環境に合わせて自分自身も変化していく姿勢を持ち続けること。新しい若者の考え方や行動は現代社会に必要なもの。それを昔の経験で否定しないこと。それが歳を重ねる上でとても大切なことだと感じています。自分が他の人のためにできることはないか。日本人らしい「相手を思いやる」の気持ちを持って歳を重ね、いつか静かに見守られながら去っていく。そんな人生を送ることができたらと思います。

生きること自体が無性の喜び。
そう捉えることができれば、毎日はときめきに満ち溢れます。

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STS-99 打上げ
提供:JAXA/NASA

 健康で心豊かに暮らしていくためには、喜びと笑いは欠かせません。今、私が一番嬉しいのは、孫の成長する姿を見ることです。元気にはしゃいで遊んでいる姿を見ていると、自然と笑みが溢れてきます。

 ときめきも大切ですよね。裏庭に植えた人参と大根がすくすくと生育していく姿。組織運営で忙殺されていたころはできなかった栽培の喜びです。窓を開けて広がる青空と差し込む太陽の光。散歩に出た時に見上げる夜空の星座の輝き。そんなひと時が私をときめかせてくれます。生きること自体を無性の喜びと捉えることができれば、きっと毎日はときめきに満ち溢れるのではないでしょうか

 義理の母が今、介護施設に入っていて幸せに暮らしています。面会に行って思うのは、シニア向け住宅に求められるのは、物理的な環境もさることながら、何よりもそこで働く人たち、介護する人たちの温かい心遣い。そして多様性への備えではないかと感じます。一人ひとりの人生に寄り添い、温かく対応してくれる、そんな施設がこれから増えていくと良いですね。私も将来そういうところに入居できたら嬉しいです。

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搭乗直前の毛利宇宙飛行士
提供:JAXA/NASA

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宇宙船の中では水は丸くなってふわふわと浮きます
提供:JAXA/NASA

Profile ────

1948年、北海道余市町生まれ。理学博士。1985年に日本初の宇宙飛行士に選抜される。二度の宇宙ミッションを遂行後に2000年、日本科学未来館初代館長に就任。2003年、深海探査艇「しんかい6500」に搭乗。また二度にわたる南極探査に参加。現在、全国科学館連携協議会会長、日本水大賞委員長としても活躍。

出典:2024年1月1日発行「間楽」3号