「あ、Sさん。これ、このつぼみ、今晩あたりどうですかね」
「うーん、これはまだよ。明日あたりじゃないかしら」
「え~、ホントですか~?」
10月のある夕刻、夕食に来られたご入居者が食堂を通り過ぎて集まっていたのは
ブランシエール浦和のクラブハウス棟玄関脇に鎮座する鉢の前。
日勤帯しかいないスタッフは決してその花を見ることができない月下美人です。
フロント前ロビーで陽光を燦燦と浴び、グリーンカーテンとして多くの人が目にしていたゴーヤとは対照的に、
夕食も終わって皆さんが居室で眠りに就く頃、白く妖艶な花を咲かせるのです。
「花も立派だけど香りが強いのよ」
だそうで、三輪も一度に咲いたら棟に入ってすぐに香りが漂ってくるのだとか。
そして、ついにその夜がやってきました。
みごとに開いた大きな花弁、文字通り香気漂う(といっても私は嗅いでいませんが)立ち姿。
実物を目の当たりにできたのは写真撮影に来られたご入居者Mさんと当直スタッフHさん、
そして近隣在住で夜道を忍んで(?)来たリビングスタッフWさんの3名のみ。
短い秋の一夜の夢を、大人しく帰った私たちは写真で楽しませてもらうとしましょう。
最後に、カメラマン役を頼んだ時の当直Hさんの一言を。
「月下美人ってお花のことだったんですか。みんなが話しているのを聞いてお酒のことかと思った」
私は知りませんでしたが、日本酒の銘柄にもある名称だそうです。
来年は月下美人で花見酒といきますか?