今回ご登場いただくのは、「ブランシエール神戸北野」でボランティアやサークル活動など、 活動的で多忙な日々を送る櫻井英子さん。これまでの歩みと、現在の活力を支える環境について伺いました。
「これから」に向き合って見えてきたもの
生まれ育った神戸の街を拠点としつつ、人生の節目ごとに海外を訪れて、多様な文化に触れてきた櫻井さん。そこで受けた刺激が、自由で自立した生き方をかたちづくってきました。
「性別に関わらず自立した人間であれ、という考え方の両親に育てられました。ならば手に職をということで薬剤師の資格を取り、大学卒業後も働きながら夜間の語学スクールに通って英語を学んで。そのおかげで、外資系医療関連企業の日本法人に『管理薬剤師』として入社できたんです。アメリカやヨーロッパなどへの出張も多く、充実していましたね」
老後について考えるようになったのは、お母様の介護を経験したことが大きかったといいます。会社を辞して自宅でできるコンサルティング業を開業し、仕事と介護の両立を図りながら、自らの将来にも想いを馳せました。
「私には子どももいないし、母と同じようにはいかないだろうなと。また60代で私自身も大きな病気を経験して、坂の途中に建つ自宅で暮らし続けるのは大変なんじゃないかと思うようになったんです」
阪神淡路大震災では自宅が損傷し、修理はしたものの、セカンドライフを見据えて櫻井さんはホームへの入居を検討し始めます。念頭に置いていたのは、住み慣れた神戸から離れることなく、ただし都心に近く利便性が高い環境。いくつものホームを見学するうちに、一人ひとりの入居者にスタッフの目が届きやすい規模感や、自室で料理ができることなども条件に加わりました。それらすべての条件に合致したのが「神戸北野」だったといいます。
「神戸YMCAとの協働事業であることも魅力でした。国際非営利団体のYMCAが認める企業が運営するホームなら間違いないだろうと考えて、入居を決意しました」
「家族みたいな存在」に囲まれて過ごす安心感
入居後は、YMCA専門学校に通う外国人留学生と日本語で話すボランティアに参加するように。
「私も英語を学んでいたので分かるんですが、ネイティブの人と話すことは外国語を習得する上で最高のトレーニングなんです。かつての自分とは逆の立場ですが、意欲ある生徒さんたちの力になれるのはうれしいですね」
現在はそれに加えて、介護フロアで暮らす英語を母国語とされるご入居者と対話をするボランティア活動にも取り組んでいます。日本語を話せても、親しみのある言語で思い出を語り合える時間を持ちたい。そんな想いに、培ってきた英語力を生かして寄り添っています。
他にもテニスや合唱、地元のご友人との交流など、現役時代に勝るとも劣らない活動的な毎日を送っている櫻井さん。そういった自分の趣味や嗜好、行動パターンを把握しているスタッフとともに暮らせることは、精神的に大きな支えになっていると感じています。
「私のことをよく知ってくれている、もはや家族みたいな存在ですよね。そんな人たちに囲まれながら年齢を重ねて、いつか介護のお世話もお任せできるっていうのは、すごく頼もしいことだと思うんです」
自由に、自分らしく、やりたいことを全力で。安心して帰れる場所を手に入れて、櫻井さんの豊かで充実したセカンドライフは続いていきます。
櫻井さんの充実のひととき
テニス
体を動かすことが大好きで、中でもテニスは学生時代から続けているスポーツ。「神戸北野」入居後は定期的に神戸市運営のテニスコートに通っており、そこでの出会いが新たな交友関係につながっています。
太極拳
日本の滝百選にも選ばれた神戸市の景勝地「布引の滝」。「神戸北野」から徒歩約15分、朝の澄んだ空気の中、散歩の途中に行う太極拳が楽しみになりました。
出典:2024年1月1日発行「間楽」3号