国際色豊かな食卓で「世界旅行」を
私たちのホームがご入居者に提供する日々の食事は、「食べて延ばそう健康寿命」を合言葉に、良質なたんぱく質や多様な食品群を摂取できるよう、栄養バランスとおいしさを追求しています。そしてそこには、「楽しさ」というスパイスを欠かすことはできません。「ブランシエール京都醒ヶ井」では昨年から、厨房を取り仕切るフードデザインスタッフと、ご入居者の生活相談などを担うリビングデザインスタッフがペアを組み、「題名のある食事」を提供しています。
取材班が訪れたこの日の夕食、題名は「ハロウィンの魔法で世界旅行へ出発」。カリフォルニアロール(アメリカ)、パコラ(インド)、ケランチム(韓国)、ボルシチ(ウクライナ)、栗羊羹(日本)といった国際色豊かなメニューが食卓を彩ります。
題名のある食事の特徴は「テーマ制」。過去には、春巻などの包み料理をメインとした「つつみこむように…」、ホテルの朝食のような「ふわふわパンケーキプレート」などを提供してきました。ご入居者からも「目先が変わって新鮮」「工夫を凝らしてくれているのが伝わってくる」などの感想をいただいています。
「どんなに健康的な食事も、食べたいと思っていただかなくては始まりません。題名をつけることで興味をもっていただくことが狙いです」と語るのは、リビングデザインスタッフの竹辻󠄀尚子。「自立型ホームでは、どんな食生活を送るかを決めるのはご入居者自身です。でも、できれば一人でも多くの方に、栄養バランスのとれたメニューを召し上がっていただきたい。食事はサービスを提供する私たちにとっても、ご入居者とのつながりをつくる、大切な機会でもあります」と語ります。
自立を保つ「食」の力
「京都醒ヶ井」の最高齢ご入居者は98歳。「題名のある食事」を含む当ホームのメニューを毎食のように召し上がり、完食されています。「先日ホームに来訪された娘様がメニュー表をご覧になり、『私より良いものを食べていますね(笑)。充実した食生活で、まだまだ元気で暮らせそうです』とうれしい言葉をかけてくださいました。より一層、ホームの食事を魅力づけていきたいですね」と、栄養士の中杉祥子は語ります。
食事を、楽しみだと思っていただくこと。召し上がって、おいしいと感じていただくこと。それをきっかけに、ご入居者間やスタッフとのコミュニケーションが活性化すること──これからも食事の提供を通して、ご入居者の健やかで楽しみのある暮らしを支えていきます。
スタッフもハロウィン仕様のコスチュームで食事のムードを盛り上げた
健康寿命の伸長を実現する食事サービスの提供を目指して
PROFILEー
一般社団法人全国食支援活動協力会学術アドバイザー。介護予防のための栄養改善プログラムの第一人者。30年以上にわたり、長谷工シニアウェルデザインの「食」分野の取り組みに協力いただいている。
お住まいの方々の健康づくりを支援するうえで食事を通したサービスの提供はとても大切な役割を果たします。2021年からよりよい食事サービスを目指して食生活と健康状態に関する実態調査をすすめていますが、その取り組みの中で大切なことが明らかになってきました。下の図は血液中の栄養指標の一つである血色素を3食食堂を利用して食事する方々とそうでない方々で比較したものです。
3食利用する方々の方が血色素が明らかに高く栄養状態が良好なことがわかりました。シニア世代にとって良好な栄養状態は老化を防ぐうえで不可欠な条件です。食堂を3食利用した適切な栄養量を摂る食事リズムの大切さを示したデータです。「京都醒ヶ井」のような余暇の要素を取り入れた食事サービスは知的好奇心を引き出し、からだの栄養状態を高める効果が期待できます。ぜひ続けていただきたいですね。
食堂の利用頻度と血色素の比較(値は性 / 年齢調整の推定平均)
食堂を3食利用する方々のほうが血色素が高いことが明らかになりました